天の原探香記。城万二の成長物語(1) 1.
はじめに、この物語が始まる前までの出来事をお話しします。 (1)
2011.3.11。東日本大震災。 @ 小学1年生。地元の支援学校の知的学級に通っていた。 A 学校で地震。 B 祖母が迎えに来る。ブラジル人の級友のカムパネルラと一緒に避難。 C 津波で父母と双子の妹と祖父を失った。父は近所の不自由な人を、母は妹たちと祖父を助けようとして逃げ遅れた。 (2)
その後。 @ 祖母は近くの缶詰工場で働き、城万二と二人暮し。 A
カムパネルラも、両親が祖母と同じ缶詰工場で働き、昼間一人ぼっち。 B
2012.祖母が倒れる。父が勤めていた老人ホームへ入る。 C
城万二はホームの寮に預けられる。 (3)
SNSへ。 @
2013正月.小学3年生。祖母がホームのロッカーにあって無事だった父のパソコンをくれる。 A
両親が留守のカムパネルラの家で、インターネットに入ると、気が晴れた。 B
城万二は勿論、カムパネルラも日本語が未熟でいじめられ、寂しさや悩みが多かった。寂しい。居場所が無い。昔に戻りたい。どうしたらいいかわからない。自信がない。つまらない。続かない。そんな気持ちは一緒だった。 C
一緒にパソコンを開いて、検索エンジンを駆使して、あの世の知恵を身につける。 D
ホームの理事長と父が作り管理していたSNSの存在を知る。 E
ホームの入所者から、そのSNSで実際にあの世へ行って、家族に会ったという話を聞く。自分ものぞいてみたいと思う。 F
SNSのサイトに入る。父が、あの世は本当に在る、自分はこのようにして自分を創り、あの世を手に入れ、強く生きてきた。そのことを息子に伝えたいと書いていた。 G
二人は、このSNSで、強く生きるための知識を学んでいくことになる。 H
中学1年。カムパネルラが事故死。 I
中学2年。悲しみも落ち着いてきて、受験のことで行き詰まる。どうすればいいかわからない。 J
SNSを開く。今回の物語に入る。入り口の画面になる。 K
指定された香のセットを通販ショップで購入する。 天の原探香記(たんこうき)。城万二の成長物語(2) 香始めます。 この物語は、城万二の溜息から始まる。中学2年の冬だ。 今朝も地震があった。クリスマスが近づくと、城万二は何とも言えない気持ちになる。特に今年は、受験の悩みが重なって、最悪だった。自分はどうして勉強をしなければならないのだろう。 毎年12月になると、あれから○年経ったな。今生きていれば○歳なのだなあ、と思う人が多い。城万二もその一人だった。 城万二は、あの物語の主人公、ジョバンニと偶然同じ読みだ。この先、ジョバンニと書くことにする。 ジョバンニは寂しくなってパソコンをつけた。 天の原老人ホームのSNSの、この物語の中に入る。 あの日の前年の、年末の商店街を歩く自分になる。家族は家に居る筈だと思う。 12月の寒い日暮れだった。夕方の5時前だというのに町は暗く、街灯や店先だけが明るく照らしていた。地平線の空がぼんやりと茜色だった。 海からの冷たい風が、音になって吹き寄せてくる。ジョバンニの背を押して、これからの旅を励ましているようだ。 まだ無傷な、南三陸市役所の3階建ての屋上が駅舎だ。 玄関わきに自動券売機がある。 自分探し、居場所探し、思い出探し、未来作りなどの駅名のボタンがある。券売機の上の全線図を見て、客は、行きたい駅を選ぶ。ジョバンニは理事長からもらったパスワードを使って、周遊券を買う。 会いたい人のコードもインプットする。 切符は、薫香録の付箋が付いたご朱印帳になっていて、これから立ち寄る各駅の駅長がスタンプを押してくれることになる。 改札は無人。エレベーターで屋上の出発ホームに上がる。 天の原探香記。城万二の成長物語(3) 再会。 暗闇に、並んでいる人影が見える。 遠くの空から雷のような音が聞こえてくる。 雲の隙間に光の点が見える。 だんだん大きくなる。汽笛を鳴らして到着。 ドアが音も無く開く。 明るい車内に吸いこまれるように入る。 乗客たちは、ぽつぽつと、進行方向に向かって座る。みんな一人だ。 ジョバンニは、前方に1年前に死んだカムパネルラを見つけた。 切符を買う時に、会いたい人の第1に入れていたのだ。 カムパネルラが死んだのは、夏祭りの夜、池で溺れた同級生を助けようとしたからだった。あの時から1年半、変わっていない感じだ。 隣に座った。 拳と拳をぶつけあう二人だけの秘密の挨拶を交わした。 ジョバンニが「おれも毛が生えたぞ」と言う。 カムパネルラが「君はいいな、体があって」と返す。 ジョバンニは不味いことを言ってしまったと思ったが、カムパネルラは全く気にしていない。 ジョバンニは「君はいいな。受験が無くて」と弱音を吐いた。 ジョバンニが本音で話せる相手はカムパネルラしかいない。 カムパネルラはからかうように言い返した。「君はいいな。受験があって」。ジョバンニは目が覚めた気持ちになった。 カムパネルラの声がジョバンニの頭に流れ込んでくる。 自分で自分に話している感じだ。 僕はこれからもずっと、君が生きている限りずっと、君と一緒に居る。 僕の「自身」はあの時に消えたが、僕の「自分」は君と一緒に成長するのさ。僕の見かけはあの時のままだが、話し相手としての僕はいつも君と同じレベルになっているよ。 あれから1年、君が学んだことは僕の学びにもなっている。 僕が君の言葉でできているからさ。 その言葉は、数百万年も前から、人類が蓄えてきた言葉、つまり言霊の海から、家族や先生や友達やテレビを通じて流れ込んで、君や僕の自分になっていたのさ。 だから君はこれからも、いろんな場面で、僕を作っていた言霊たちと再会するだろう。 それと気づかなくても、何となく古い友達と会ったような気がするだろう。 勉強はそういうことだよ。 それから二人は黙って窓から、地上の明かりと雲の上の月を眺めていた。 アナウンスが始まる合図のように、コトコトという小さな音が響いた。 天の原探香記。城万二の成長物語(4) あの世へ。 発車を知らせる電子音が流れる。ジョバンニには「アマノハラ フリサケミレバ カスガナル ミカサノヤマニ イデシツキカモ」と聞こえた。ジョバンニがあの津波の頃とれた唯一の「小倉百人一首のかるたの札」だ。 音も無くドアが閉まる。 キラキラ光る町の灯が、流れ、離れ、闇に吸い込まれていく。 アナウンスが始まる。 本列車はこれから、この世の引力圏を脱してあの世へ入ります。感情の脳に重力がかかります。シートベルトを着用して下さい。 今から、香りが流れます。その香りを言葉にすることで、この世の引力をふりきるのです。答は切符の薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りが出ないので、パソコンを離れ、現実に戻って、実際に香をたくことになっている。予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。言葉の脳つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える香りだ。 パソコンに戻る。画面のテーブルの薫香録に記入する。 脱出が完了しました。シートベルトをはずして下さい。本列車はこれから静かな言霊の宇宙、あの世を旅します。 天の原探香記。城万二の成長物語(5) 瓦礫(がれき)1。 トンネルに入ります。その間を利用して、心の切り替えをします。肺呼吸をえら呼吸に切り替える要領で、感覚や感情の脳を言葉の脳に切り替えます。 これから向かうあの世では、言葉の脳が言葉で呼吸をしなければなりません。 事前にブルカニロ博士のビデオであの世の言葉を学びます。 ビデオは長いので、細切れにして、駅と駅の間、睡眠学習をします。 この列車はもうあの世に入っています。というか、みなさんは地上でもあの世に居たのですが、感覚や感情の脳が映し出すこの世の光に目がくらんで、気が付かなかったのです。 この旅の目的はあの世の存在に気付くことです。 この世とあの世の両方にまたがって、どのように生きればいいのか、を学ぶのです。 イヤホンを付けてください。明かりを消します。 前の座席の背のビデオが最初の章を語り始める。 3.11の津波の時。積み上げられた瓦礫の山。家族やアルバムを探す人々も映る。 瓦礫には、地上の瓦礫と心の瓦礫があります。 心の瓦礫は一人一人別々に、感情の脳の中にあります。 心の瓦礫とは、言葉にし切れないで未消化なままの感情のわだかまりのことです。 言葉にして言葉の脳に移すことで片付きます。 今、トンネルを抜けました。 前の席の背もたれのポケットに、ビデオの目次が書かれた紙が入っています。 第1章。心の瓦礫の片付け。 第2章。この世とあの世の関係。 第3章。この世とあの世がある。 第4章。二つの世界に生きている。 第5章。離れ離れになった家族。 第6章。体ではなく心、それも霊であること。 第7章。あの世とは。 第8章。この世とあの世、大切なのはどっち。 第9章。あの世は、この世で強く生きる力を生みだす場所。 第10章。あの世の超能力を身につける。 天の原探香記。城万二の成長物語(6) 瓦礫(がれき)2 右前方に新しい星の群が見えています。 あれが3.11の津波で犠牲になった人々をしのぶ星の群です。 星座は星と星をつないで作る絵ですから、見る人の記憶が星を線でつないで、それぞれの星座、例えば交番や市役所、水産工場に見えるのです。 ジョバンニは、津波の一週間前の、ひな祭りの晩の、かるた遊びの星座を見つけました。カムパネルラもいます。幼い妹を見ながら母が読むかるたを、祖父母や父と一緒に取り合って遊んでいます。 別の星の群が、天の川の奥にたくさんあるのが見えます。 人類と津波の苦闘の歴史が見えます。 しかし若いジョバンニには目先の受験の方が大問題でした。 人類はそうやって苦難を乗り越えてきたのです。 この世の瓦礫は埋められ、視野から消えましたが、死者15,894人、行方不明者2,562人、それらの人々の関係者の記憶の瓦礫となれば、膨大で、癒えることはありません。 天の原老人ホームの人々も、それぞれに心の瓦礫を背負っています。 しかし、体力や気力の事もあって、自力での片づけは難しくなっています。 ジョバンニはそんな瓦礫に生えた希望の若木でした。 奇跡の一本松は枯れましたが、未来は若木に託せばいいのです。 このSNSの管理者である老人ホームの理事長は相撲が好きで、テレビで観戦したあと、みなの表情が、少しだけ明るくなるのに気が付きました。 若い力士の成長を応援すると、心の瓦礫が軽くなるのです。 そこで、ホームとジョバンニのパソコンをつないで、ジョバンニの成長をみなで応援できるようにしました。 天の原探香記。城万二の成長物語(7) この世とあの世 ジョバンニが眠っている間、「ブルカニロ博士のビデオ第2章。この世とあの世の関係」が流れます。内容は次の通りです。 この世とあの世があることを知りましょう。 家族や友達は見えなくなると、居なくなります。でも記憶としては居続けています。見えていれば居て、見えなくなると居なくなるのがこの世です。記憶になって居続けているのがあの世です。 あの世というと、死んだ人が行く、そして住む、そんな場所を思い浮かべると思います。ここで言うあの世は、記憶の中に居るという意味であって、その人が生きていても死んでいても関係ありません。 記憶の能力が弱い子供にはこの世しか見えませんが、大人になって記憶する脳の働き、ここでは言葉の脳といいます、が成長すると、あの世が見えるようになります。 この世は目に見え、耳に聞こえ、手で触れる世界のことです。 あの世は、言葉の世界のことです。 「今日はこのリンゴの話をしますと言って、先生は赤いリンゴを見せました」。これがこの世のリンゴです。「今日はリンゴの話をします、と先生が言いました。みんなはそれぞれリンゴを思い浮かべました」。これがあの世のリンゴです。 「先生が日本画を見せました。黒い線が見えました」。これがこの世の絵です。「富士山が見えました」。これがあの世の絵です。 「先生が黒板に1+1=と書きました」。これがこの世の数字です。「みんなは2という数字を思い浮かべました」。これがあの世の数字です。 この世とは、感覚や感情の脳が映し出している現在の現実のことで、あの世とは、言葉の脳が作り出している記憶の過去や願望の未来のことで、結局、世界も時間も、同じことについての、言葉の使い方の違いなのです。実は自分というのも、世界や時間と同じことについての、言葉の使い方の違いなのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(8) 伝言板と応援 伝言板と応援 アナウンスが流れる。 列車は天の川の岸辺を上流に向かっています。 もうすぐ、駅が見えてきます。 自分探しの駅です。 ジョバンニが、ぼんやり外を眺めていると、よだかの形をした流れ星。 画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れる。 ジョバンニは気づいていないが、天の原老人ホームの入所者が、大画面で、SNSを見て応援して、ツイッターを送っているのだ。ジョバンニには流れ星が伝言を持ってきたように映る。それはこんなテロップだった。 「言葉の力を身につけて下さいね。楽しみに待っています。どんなご馳走も、お腹に入れば同じ。どんな刺激でも、感覚や感情の脳をしばらく興奮させるだけ。言葉にすれば身に着きます。何を体験したかより、どの脳で体験したかの方が大切ですよ」。 天の原探香記。城万二の成長物語(9) 別れ。 列車は天の川の河原を走っている。川幅が狭くなって、向こう岸がみえる。 カムパネルラはこの辺りで乗り換え、あの物語で南十字座方面として登場する「自身探しの駅」へ向かう。 カムパネルラが言う。僕は別の列車に乗り換えなくてはならない。 毎年、世界で1億5千万人が生まれている。 その一人として自身を取り戻したら、言霊をもらって自分を作るために、この列車に乗りに来るよ。 その時の自分は、僕でも君でもない別の自分だけど。 ジョバンニは静かな気持ちだった。 河原のススキの群生に目を移して、戻したら、カムパネルラは消えていた。 隣の列車の窓から手を振っている。幼かったジョバンニをかわいがってくれた老人ホームの人々も一緒だ。 ジョバンニも手を振った。 列車は、天の川の鉄橋を渡り、星の群の奥に消えて行った。 見送っていると、よだかの形をした流れ星だ。 画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れた。 「セヲハヤミ イワニセカルル タキガワノ ワレテモスエニ アワントゾオモウ」。
幼いカムパネルラが、あの日唯一とれた、小倉百人一首の札だ。
ジョバンニは気づいていないが、天の原老人ホームにいる祖母が、大画面で、SNSを見て、応援して、ツイッターを送ったのだ。 ジョバンニには、流れ星が運んだカムパネルラからの伝言のように映る。 天の原探香記。城万二の成長物語(10) 自分探しの駅(1)。 駅が見えてくる。 アナウンス。当列車は天の川源流に着きました。天の川とともに、皆さまの旅はここから始まります。 ホームに満開の桜の大木が覆いかぶさっている。根元の洞がトンネルで、向こう側に小さなピンクの駅舎が見える。 乗客が降りる。あの津波ですべてを流され、自分を見失っている人々だ。ジョバンニも続く。 改札を出てすぐ伝言板と書かれたモニターがあった。 会いたい人の名前や個性をインプットすると、その駅を通過した客の記録を検索して、ヒットすれば、その時残した伝言や後ろ姿を見せてくれる。 ジョバンニは父について入れた。ヒットした。 まだ幼い息子に渡したい7種の香がある。まだ3種しか集まっていない。SNSはこの世の時間ではないので渡せると思う。データが大きすぎるので、駅ごとに、一つずつ渡そうと思う。このSNSの名前、探香の由来でもある。 この駅で渡すのは「自分探しの香」だ。 駅長が待っている。山猫のような黄色と黒の縞模様の制服だ。 私のあだ名は山猫です。要領は悪いですが自分だけは自信があります。 ジョバンニは燃えるような眼の光を見てなるほどと思った。 この改札から源流まで河原を歩いていただき、途中、自分が映る玉石を探してもらいます。 私も昔は乗客で、足しげく通いました。めでたく体を卒業して、ここの駅長になって、みなさんのお世話をしています。 河原には、これまでのすべての人類が残した言霊が小石となって積もっています。 ジョバンニは、お父さんもこんな風に、この先の何処かの駅に居るような気がした。 玉石は見つからず、記念にピンクの小石を拾ってポケットに入れた。 この桜の樹の上にツリーハウスの喫香店があって、そこでお香の会を開きます。 梯子段を上る。ベランダのような場所にテーブルと椅子がある。駅長を囲んで着席する。 天の原探香記。城万二の成長物語(11) 自分探しの駅(2) 自分とは。 山猫駅長。香元。お香を始める前に、「自分」についてのイメージを共有したいと思います。 みなさんは、自分とはどんなものか考えたことはありますか。鏡に映った姿だと思う人も、競争で負けたくない気持ちだと思う人も、名前を呼ばれた時の気持ちだと思う人もいるでしょう。 鏡に映るのは感覚の脳が作る体としての自分で、自身と呼びます。競争で負けたくない気持ちは感情の脳が作る自分で、自我と呼びます。名前を呼ばれた時の気持ちは言葉の心が作る自分で、これがここでは本当の自分です。 本当の自分は、体としての自身や、感情としての自我ではうまく対処できない困難に出会った時にだけ、言葉の脳が言葉で作る人格のことです。 うまく行っている時は自分は消えています。しかし、何か努力しないと乗り越えられない困難があると、本当の自分が現れ、克服したいという願いを目的の言葉にします。さらに、挑戦しようとう勇気の言葉、苦しくても我慢しようという我慢の言葉、もっとしてみようという努力の言葉を作って、困難の克服に挑戦するのです。 ヒトは困難に出会うことによって、サルからヒトになるのです。 幼い頃は、自力では、これから何をしていいのか分からなかったですね。みんなとか、仲間とか、リーダーに目的を委ねてしまいましたね。何をすればいいかは、自分が決めることですが、その自分が育っていなかったのです。この駅で、本当の自分を手に入れましょう。 本当の自分を手に入れるための、心の準備体操から始めます。黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 SNSに戻る。薫香録に記入する。 これから、皆さんがお持ちの感覚や感情の脳が作り出す自身や自我を、言葉の脳が作り出す自分にします。自身や自我はこの世のものなので、あの世では役に立たないのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(12)自分探しの駅(3) 和香会。 駅長が宣言する。香始めます。礼。 香題は「自分を作る」です。 自身と自我と自分の3種の香を廻します。 自分の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の人生です。答を薫香録に記入して下さい。 ジョバンニが小学3年の時、祖母が父のパソコンと一緒に香合を7つ、くれた。3つには香が入っていたが、残りは空だった。中の紙キレに父の字で、香の名前と「SNSの組香用」の文字があった。形見として仏壇の引き出しに入れていた。ジョバンニは今がその時だと気が付いた。SNSを離れ、仏壇の引き出しから香合を取り出した。 まず通販で買った3種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香は日向の匂いがした。 第2香は水仙の匂いがした。 第3香は磯の匂いがした。 次に父が残した自分と言う名の香を聞く。 第2香と同じ水仙の匂いがした。 SNSに戻る。 第2香と解答した。 組香に失敗した人々は、ふっと消えていく。 (解説)双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の入り口に戻ったのです。途中で身に着けた言霊はそのままですので、次回の挑戦はここから始まります。つまり急行列車で直接ここまで来ます。ジョバンニは、たくさん苦難に出会ったせいか、順調にクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。その話は後で出てきます。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 塵裡偸閑 ・迷いのない、心になる。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 天の原探香記。城万二の成長物語(13)自分探しの駅(4) 出発。 駅長。 そろそろ出発の時刻です。ご乗車下さい。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 案内所のバインダーに、父が書いていた古い薫香録を見つける。 ジョバンニと同じ中学2年だ。受験に悩んでいた。 自分は何をすればいいのだろう、というような内容だった。 列車に乗る。出発すると、黒方の香りが流れてくる。学んだことが、きちんと心に写される。 ぼんやり外を眺めていると、よだかの形をした流れ星。 画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れる。 「カルト宗教や自殺に引きずり込む悪い言霊に打ち勝つ言葉の力を身につけてね」。 解説付きだった。 困難に出会うと、感情の脳は、絶望、逃避、怠惰に引き込もうとします。 言葉の脳は目的、勇気、我慢、努力の言葉で立ち向かいます。 絶望、逃避、怠惰の先は、カルト宗教や自殺です。 言葉の脳には目的が必要です。 目的が無い状態は退屈という苦痛です。 手軽に目的を得るため、良く考えずに外から与えられた言霊を信じてしまうこともあります。 生きる目的が見えない、生きる目的が欲しいということで、過激思想やカルト宗教に取り込まれてしまう人もいます。 足りないのは教えではなく、自分で作る目的なのです。 ジョバンニは眠くなってきた。 よだかの形をした流れ星のテロップはまだ続く。 困難を言葉にして理解し、目的を作り、勇気を奮い起して挑戦し、我慢と努力をするのは、感覚や感情の心にとっては苦しみです。でも言葉の心にとっては喜びなのです。 自殺や過激思想やカルト教団に囚われてしまうことを防ぐにはどうすればいいのでしょう。 自分や世界や時間を言葉で作る力を育てる。 目的を言葉で作る力を育てる。 目的を信じて、挑戦や我慢や努力が出来る力を育てることです。 ジョバンニはとうとう眠ってしまった。 天の原探香記。城万二の成長物語(14)自分探しの駅(5) しばらくするとビデオが流れ始める。 「ブルカニロ博士の第3章、この世とあの世、大切なのはどっち」。 皆さんは、見えていること信じますか、それともそのことについて知っている言葉を信じますか。 この世は目に見えている世界です。 あの世は言葉で知っている世界です。 皆さんはどちらを信じますか。 言葉には現実に裏づけされた確かな言葉とか、現実の裏づけがされていない不確かな言葉とか、現実を捻じ曲げた嘘の言葉などがあります。 現実というのが確かさや正しさの基準になっています。 ここで言う言葉とはあの世、現実とはこの世のことですから、何となくあの世よりこの世の方が、言いかえれば言葉より現実の方が信じられるように思われます。 現実とは眼や耳や鼻や舌や皮膚などで感じるこの世のことです。 でも感じ方は人それぞれだし、体調や気分でも変わるし、その場限りで消えてしまう、あやふやなものでもあります。 蜃気楼は見えるからあるとは限りません。 物の陰は見えないけれど何も無いとは限りませんね。 完全ではないけれど、やはり、自分で作った言葉を信じるしかありません。 間もなく世界探しの駅です。 アナウンスで目が覚める。 ジョバンニは相変わらず受験のことを考えていた。 受験なんかない国へ行きたい。 列車は天の川の川原を走っている。向こう岸は霧で見えない。 天の原探香記。城万二の成長物語(15)世界探しの駅(1) 霧の奥にネオンがきらめく町が浮かんでいる。 そこだけが夜だ。 賑わう通りの裏のドブがトンネルになっていて、その奥の駅舎に薄暗い灯がともっている。 世界探しの駅だ。止まった。 改札を出てすぐに伝言板と書かれたモニターがあった。 ジョバンニは父について入れた。あの日の直前の父らしい声が聞こえてきた。 まだ幼い息子に渡したい7種の香がある。3種しか集まっていない。SNSで時間差を利用して渡そうと思う。データが大きすぎるので、駅ごとに、一つずつしか渡せない。この駅で渡すのは二つ目の「世界探しの香」だ。 乗客が降りる。ジョバンニも降りる。あの津波ですべてを流され、自分の居場所を見失っている人々だ。 駅長が迎えてくれた。私の名はツエ・フウ・クンです。要領は悪いですが土地勘だけは自信があります。 ジョバンニはひくひくする鼻を見てなるほどと思った。 私も昔は乗客で、足しげくランチに通いました。めでたく体を卒業して、ここの駅長になって、みなさんのお世話をしています。 この改札から天の原中華街まで地下道を歩いていただき、途中で、食べればかぐや姫のように月と行き来出来るようになる月餅を探してもらいます。 天の原中華街には、これまでのすべての人類が発した美味しい言霊がそろっています。 ジョバンニは、お父さんも、この先の何処かの店に居るような気がした。 月餅は売り切れ、お店のチラシをもらった。 天の原探香記。城万二の成長物語(16)世界探しの駅(2) 駅長が演説を始める。 初めに、世界についてのイメージを共有しましょう。 世界にはこの世とあの世の二つがあります。 まとめてしまうと理解できなくなりますので、この先はこの世とあの世に分けて話を進めます。 幼い頃は見えたり触れたりする範囲を世界の総てだと思っていましたね。 それがこの世です。 言葉の脳の成長に従って、オセロのように、世界が言葉になっていきます。 具体的な黒が、抽象的な白に裏返っていきます。 遊んでいる相手が○○ちゃんになり、遊んでいる場所が○○公園や○○町になります。 地球儀が現れ、○○町が地球になります。 さらに月や星や太陽も加わって、地球が宇宙になります。 見たり触ったりとは関係なく、言葉として知ったら世界の一部になるのです。 そうやって、世界は、具体的な事物から抽象的な言葉になって、あの世が広がっていきます。 勉強はその為にするのです。 困難とは、感覚や感情の脳では解決できない、言葉の脳を使わなければ解決できない難題のことです。 感覚や感情の脳が映し出しているのがこの世、言葉の脳が作り出しているのがあの世ですから、困難とはこの世では解決できない、あの世の力つまり言葉の脳の力を用いなければ解決できない難題のことです。 言葉の脳の力、つまり目的、勇気、我慢、努力については、この先の駅で学びます。 難題がない時は、脳はこの世、難題に出会うと、脳はあの世に切り換わるのです。 楽にしている時は動物としての感覚や感情の脳でいて、苦難に出会うとヒトとしての言葉の脳に切り換わるのです。 言葉の脳にとって、困難に挑戦するのは楽しいことです。 研究やクイズや推理小説が楽しいのと同じです。 感覚や感情の脳が危険や冒険のスリルを楽しむのと同じです。 平穏な生活に慣れると、あの世の力、言葉の脳の力が薄れて、苦難に出遭っても、挑戦できなくなってしまいます。 この世の苦難を乗り越える力は、この世ではなくあの世に湧いてくるのです。あの世を作る、強く育てる、勉強はその為にするのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(17)世界探しの駅(3) 駅長。この店は飲香(ヤムシャン)の老舗です。 お香の会の準備がしてあります。 円卓に着席して下さい。 本当の世界を手に入れるための、心の準備体操から始めます。 黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 パソコンの画面に戻る。薫香録に記入する。 これから、感覚や感情の脳が映し出す虚無を、言葉の脳が作り出す言葉にして、本当の世界を作ります。感覚や感情の脳が映し出すすべては、あの世では虚無なのです。 香始めます。礼。 香題は「本当の世界を作る」です。 本当の世界と虚無の2種の香を廻します。 本当の世界の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 ジョバンニが小学3年の時、祖母がパソコンと一緒に香合を7つくれた。3つには香が入っていたが、残りは空だった。中の紙キレに父の字で、香の名前と、SNSの組香用、と書いてあった。形見として仏壇の引き出しに入れていた。今がその時だと気が付いた。SNSを離れ現実に戻る。仏壇の引き出しから取り出した。 まず通販で買った2種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香はやまなしの匂いがした。 第2香はペン・ネン・ネン・ネン・ネン・ネネムの匂いがした。 次に父が残した世界と言う名の香を聞く。 第2香と同じやまなしの匂いがした。 SNSに戻る。 第1香と解答した。 組香に失敗した人々は、ふっと消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の入り口に戻ったのです。ここまでで身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 「多而不厭・広い心になる」です。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 天の原探香記。城万二の成長物語(18)世界探しの駅(4) そろそろ出発の時刻です。ご乗車下さい。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 案内所のバインダーに、父が書いた古い薫香録を見つける。ジョバンニと同じ中学2年だ。こんな内容だった。 自分の居場所は、自分の言葉で、自分の中に作らねばならない。それが本当の自分の居場所なのだ。 列車に乗る。出発すると、黒方の香りが流れてくる。学んだことが、きちんと心に写される。 忘れかけていた父の背中がちらっと見えた感じがした。父との2人旅だと思うと、いままでより少し、寂しさが軽くなった感じがした。 ぼんやり天の川を眺めていると、ジョバンニは、あの物語の主人公になっていた。「青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした」。 その時、よだかの形をした流星。画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れた。 「寂しさに負けない人になって下さい」。家族が生きていた時だって、離れていた時の方が長かったはずです。声を交わして話をしていた時ばかりでなく、心の中で話してもいたはずです。そんな時の方が、親しく、深い話が出来たはずです。 ジョバンニが眠っている間、「ブルカニロ博士のビデオ第4章。二つの世界に生きている」が流れる。内容は次の通り。 私たちはあの世とこの世の二つの世界に、どのように生きているのでしょう。 私たちは土や石でできた地球という惑星に暮らしていると思っています。体としてはそうです。 しかし本当の私たちである心は、一人一人別々の脳が作り出している情報世界に暮らしています。 さらに言えば、感覚や感情の脳が作り出すこの世という情報世界と、言葉の脳が作り出すあの世という情報世界にまたがって暮らしているのです。 この世もあの世も外の景色ではなく、一人一人別々に、それぞれの脳が映し出している脳内の映像です。働いている脳の部分が違うだけです。 私たちは、目や耳や鼻で感じて脳が映しているこの世と、言葉の脳が言葉で作っているあの世の両方を行き来して、暮らしています。 例えばミズスマシのように、空中と水中の両方の世界にまたがって水面にいるのです。 両方を同時に見ることはできませんが、チカチカすばやく切り替えることは可能です。 天の原探香記。城万二の成長物語(19)過去探しの駅(1) 列車はまだ天の川の川原を走っている。向こう岸は見えない。 ジョバンニは相変わらず受験のことを考えていた。 どうして歴史を勉強しなければならないのだろう。 青黒い砂漠の地平線の丘に夕陽が沈もうとしている。 連なる岩の棚に、本の背表紙が連なっている。 近づくにつれて、一面に掘られた洞窟だと分かる。 敦煌の遺跡のようだ。 部屋の一つ一つに明かりがともっている。 一階が駅のドームで、壁や天井はモザイクタイル。 複雑な模様が浮かびあがっている。 過去探しの駅だ。 乗客が降りる。あの津波の後で、流されたアルバムを探していた人々だ。ジョバンニも降りる。 駅長が迎える。 私のあだ名はコウモリです。 要領は悪いですが記憶だけは自信があります。 ジョバンニはたくさんの洞窟を見てなるほどと思った。 みなさんには、この改札から天の原古代地層まで谷川沿いに道を歩いていただき、途中、化石の瓶詰を探してもらいます。 私も昔は乗客で、足しげく通いました。 めでたく体を卒業して、ここの駅長になって、みなさんのお世話をしています。 天の原の地層で見つかる化石は、これまでのすべての人類が発した言霊が、化石になったものです。 ジョバンニは、お父さんもこんな風に、この先の何処かの駅に居るような気がした。 化石の瓶詰は見つからず、化石の缶詰をもらってポケットに入れた。 天の原探香記。城万二の成長物語(20)過去探しの駅(2) 過去とは何かをお話して、自分が何処から来たのかを知るお手伝いをしたいと思います。 この洞窟群全体が工場です。 入り口の大きな部屋は記憶の製造工場です。 記憶のビン詰めと缶詰めを製造しています。 感覚や感情の記憶を作る脳と、言葉の記憶を作る脳のことです。 感覚や感情の脳は体験をすべて記憶しているのですが、思い出そうと思っても思い出せません。 同じ体験をした時にだけよみがえるのです。 香りの記憶がその好例です。 外から中身が見えないという意味で缶詰なのです。 言葉の脳は体験を言葉に加工して記憶します。 いつでも思い出したい時に思い出せます。 中身がいつでも見えるという意味でビン詰めなのです。 上の洞窟はビン詰の倉庫です。 人類がこれまで発した言霊の数だけ在ります。 みなさんがお探しの過去も、必ずあります。 そこのエレベーターはすべての洞窟につながっています。 その茶色の画面にお捜しの過去のキーワードをインプットすると、その洞窟に運んでくれます。 でもまだ、何をインプットすればいいのかわかりませんね。 本当の過去を手に入れるための、心の準備体操から始めます。黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 SNSに戻る。薫香録に記入する。 これから、缶詰を開けて、感覚や感情の記憶を言葉の瓶に詰め換えます。 そこの円卓に着席して下さい。 天の原探香記。城万二の成長物語(21)過去探しの駅(3) 香始めます。礼。 香題は「過去を作る」です。 過去と現在と未来の3種の香を廻します。 過去の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 小学3年の時、祖母がパソコンと一緒に香合を7つくれた。3つには香が入っていたが、残りは空だった。中の紙キレに父の字で、香の名前と、SNSの組香用、と書いてあった。形見として仏壇の引き出しに入れていた。今がその時だと気が付いた。SNSを離れ現実に戻る。仏壇の引き出しから取り出した。 まず通販で買った3種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香は(さるのこしかけ)の匂いがした。 第2香は給食のパンの匂いがした。 第3香は薬箱の匂いがした。 次に父が残した過去と言う名の香を聞く。 第1香と同じ(さるのこしかけ)の匂いがした。 SNSに戻る。 第1香と解答した。 組香に失敗した人々は、ふっと消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の入り口に戻ったのです。途中で身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 静中成友・さびしさに負けない、心になる。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 天の原探香記。城万二の成長物語(22)過去探しの駅(4) この駅にはコインロッカーがあります。 思い出したくはないが忘れたくもない記憶は、ここに預けることができます。 誰かに伝えたいけれど、相手が幼すぎて渡せない記憶もあります。 その時が来る前に無くなってしまう恐れもあります。 そんな記憶もここに預けます。 いつかその人がこの駅に立ち寄って受け取るためです。 こちらは、かさばる記憶のためのトランクルームです。 津波などで失われた小学校や役場、松林や村全体などです。 ジョバンニには思い出すたびに辛いけれど無くしたくない記憶があります。 カムパネラと大喧嘩をした時の記憶です。 それをコインロッカーに預けました。 そろそろ出発の時刻です。ご乗車下さい。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 バインダーに、父が書いた薫香録を見つける。 ジョバンニと同じ中学2年だ。こんな内容だった。 ヒトはなぜ悲しみに苦しむのか、悲しみは消せないとしても苦しみは消せないのか。悲しみを言葉にできないから言葉の脳が苦しんでいるのだ。家族を言葉にして一緒に暮らせばいいのだ。 列車に乗る。 出発すると、黒方の香りが流れてくる。学んだことが、きちんと心に写される。 発車してしばらく、ジョバンニは父の伝言を思い出していた。 ジョバンニは、みんなが一緒に家に居る時も、バラバラに出かけていた時も、いつも心の中では一緒にいたことを思い出した。 そして今も変わらず一緒に居ること、さらに、話してくれた昔話や、褒め言葉、諌め言葉、慰め言葉などを思い出し、それが今の自分になっていることに気が付いた。 ヒトは言葉で出来ているのだと思った。 父との2人旅だと思うと、いままでより少し、寂しさが軽くなった。 天の原探香記。城万二の成長物語(23)過去探しの駅(5) ジョバンニが眠っている間、「ブルカニロ博士のビデオ第5章。離れ離れになった家族」が流れる。内容は次の通りだった。 あの世は、なぜ死んだ人が行く場所だと思われたのでしょう。 家族や友達が死ぬと、見えなくなります。聞こえなくなります。触れなくなります。 感覚の脳が映すこの世から消えてしまいます。 でも、生きていた時の記憶は言葉の脳にそのまま残っています。 言葉の脳が作る記憶であるあの世では、今まで通りなのです。 生きている間は、あの世とこの世の両方に現れたり消えたりしていたのですが、死ぬとあの世だけになります。 体の死で消えるのはこの世だけで、あの世には居続けるのです。 あの世は体の生死に関係のない居場所なのです。 あなたが知っている人々は生死にかかわらず、みんなそこに居ます。 これから、みなさんの周りには、生きている人だけ、見えている人だけが居るのではないことを説明します。 人はこの世だけでなくあの世と両方にまたがって暮らしているのです。 見えたり、聞こえたり、触れたりしている間は、感覚の脳が映し出すこの世に居ます。 記憶になれば、言葉の脳の中にいつでも居るのです。 どちらがより大切かというと、生きる力を強めるという点で、言葉の脳の中に居るヒトの方が大切です。 友達も、学校が終わってさよならをすると、この世からは消えても、言葉の脳のあの世にいるので寂しくありません。 そして翌朝、学校で会うと、この世に現れます。 でも授業中に目を離せば、この世から消えます。 あなたにとっての友達は脳の外に居るのではなく、感覚の脳と言葉の脳のそれぞれに、別々にいるのです。 感覚の脳に居るこの世の友達は、主に目に見えている時しか居ません。 そして見えなくなれば消えます。 言葉の脳に居る友達は、いったん言葉にして記憶してしまうと、いつまでもあなたとともに居ます。 遠くに引っ越しても、また津波や事故で死んだとしても、友達はあなたの言葉の脳のあの世に居ます。 会話も今まで通りできます。 よく、死んだ人はあの世へ行ったといいます。 正しく言えばこの世から消えて、あの世だけに居るようになったということです。 生きている間もあの世に居たし、今生きている人もみんなあの世に居るのです。 この世だけが点いたり消えたりしているのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(24)暗黒星雲コールサック(1) 遠くになめとこ山の熊の背中のような黒い空間が見えてくる。 アナウンスが聞こえる。 これから暗黒星雲コールサックを通り抜けます。 途中、4つの難所を通過しなければなりません。 未来探しの駅はその向こうにあります。 暗黒星雲コールサックには強い重力があって、光も通過出来ません。 情報である私たちは質量がゼロなので重力の影響を受けません。 しかし感情の脳は磁場の影響を受けるのです。 感情の脳はみなさんが微生物だった時代から備わった本能で、つい最近身に着いた言葉の脳の働きより人格への影響力が圧倒的に強いのです。 列車はこのまま進行します。 一つ目の難所は絶望の門です。 二つ目の難所は逃避の門です。 三つ目の難所は衝動の門です。 四つ目の難所は諦めの門です。 それぞれの門を抜けるためのエンジンが4基あります。 目的、勇気、我慢、努力のエンジンです。 これから各機関室に行って、機関長と対策をしていただきます。 機関車と客車の間に4つの機関室があって、そこは白い砂が敷きつめられた坪庭になっていて、飛び石で、次の機関室に渡れるようになっています。 一つ目の機関室への飛び石にはヒマワリ、二つ目の機関室への飛び石にはチョウ、三つ目の機関室へ渡る飛び石には亀、四つ目の機関室への飛び石にはセロの模様があります。 各機関室のロゴマークです。 暗黒星雲コールサックが近づいてきましたので、前方一つ目の機関室へ移動してください。 他の乗客と一緒に席を立って前方へ向かう。 途中の窓の外によだかの形をした流星が飛ぶ。 テロップは、父からの伝言だった。 ここから先、今の自分に、渡せる香はない。 目的、勇気、我慢、努力の4種の香はSNSの抽象的な場の中には無いようだ。 現実のこの世で具体的に体験して作るもののようだ。 ゆっくりがんばれよ。 天の原探香記。城万二の成長物語(25)目的の機関室(1) 最初の機関室に向かう。 これからどう生きればいいか、何をすればいいか、を探している人々だ。 ジョバンニも何故受験なんかしなければならないのだろうと思いながらついて行く。 機関長が迎える。 私のあだ名は羅針盤です。要領は悪いですが信念を曲げないことだけは自信があります。 ジョバンニは、立派なカイゼル髭がSとNを指しているのを見てなるほどと思った。 これから暗黒星雲コールサックの第一の難所「絶望の門」に入ります。 絶望と言うと、既に目的を持っている人が挫折して諦めることのように思うでしょうが、ほとんどの絶望は、望みを持っていないという絶望、つまり無望のことです。 動物は言葉の脳の働きが弱く、基本的に無望なので、無望でも苦悩は生じないのですが、ヒトは言葉の脳の働きが強いので、無望は絶望と同じように苦悩を生じるのです。 目的には二種しかありません。何かから逃れることと、何かを手に入れることです。 感覚や感情の心が生み出す欲望は、この世の浜辺で、満たしては渇くを繰り返す、形も方向もない波ですが、この庭の白い砂に描かれた波は、言葉の心が作る願望、目的で、いったん作れば、磁石のように方向が定まります。 ここのエンジンの燃料は目的を表す言葉です。 絶望の門を抜けるため、目的を表す言葉を作って、この香炉のエンジンにくべましょう。 いつもの通り、本当の目的を手に入れるための、心の準備体操から始めます。黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 SNSに戻る。薫香録に記入する。 これから、皆さんがお持ちの感覚や感情の脳が作り出す欲望を、言葉の脳が作り出す願望、目的にします。欲望は生木なので、湿っていて、そのままでは良い薪にならないのです。 その円卓に着席して下さい。 天の原探香記。城万二の成長物語(26)目的の機関室。(2) 香始めます。礼。 各席に薫香録と鉛筆があります。下の名だけをひらがなで書きます。 組香です。 香題は「目的の言葉を作る」です。 願望と欲望の2種の香を廻します。 願望の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 SNSから離れて、実際に、通販で買った2種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香はバラの花の匂いがした。 第2香は百合の匂いがした。 父が残した目的と書かれた香合は空なので、困っていると、よだかの形をした流れ星が光った。「これからの人生で、自分で手に入れなさい。今日のところは第2香と書きなさい」というテロップが流れた。 第2香と解答した。 組香に失敗した人々が、機関車の窓から、暗黒星雲コールサックに吸い込まれて消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の暗黒星雲コールサックの入り口に戻ったのです。途中で身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 天の原探香記。城万二の成長物語(27)目的の機関室。(3) 願いを言葉にして目的を作れば、少なくとも挑戦が出来るようになります。 開けるべきドアが出来るのです。 新約聖書にも「叩けよさらば開かれん」とあります。 まずドアを作るのです。 その先は次の勇気の機関室で聞いて下さい。 言葉は覚えることで身に付きます。書くとよく覚えられます。薫香録を書くのは、覚えてこの世に持ち帰るのが目的です。みなさんが書いた薫香録はこの駅に残して、未来の乗客たちが閲覧できるようになります。 帰ってからも、このSNSに入って、この百合の形をしたボタンを押して、この駅に来れば、目的を作る言葉を思い出すことができます。 今車掌から連絡があって、無事に第1の難所を通過出来ました。 すぐに次の難所に入ります。 次の機関室へ移動願います。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 窓に、よだかの流星。 画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れる。 「目的を作れる人になって下さい」。 大人になったら、もう、受験などの目的は外から与えられなくなります。 自分で目的を作らねばならなくなります。 自分で目的を作れる大人になって下さい。 受験はそのための練習です。 目的が定まると、勇気や我慢や努力の気持ちが自然に湧いてきます。 大切なのは、自分で目的を作ることです。 目的とは何だったのでしょう。 なめとこ山の頂上のようなものです。 頂上からの景色を夢みて、勇気と我慢と努力をするための口実のようなものです。 実際に頂上に立てても立てなくても、幸福はそのプロセスにあるのです。 実際の頂上には場所も、手に入れるものもない、ただの点なのです。 本当の幸福は、歩いている間の一歩一歩のプロセスなのです。 しかしこのことは、後になってみないと分からない、ヒトの心はそのように出来ているのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(28)勇気の機関室。(1) 前の機関室へ移動する。ジョバンニもついていく。 自分にできるのだろうか、うまくいくのだろうか、このやり方でいいのだろうか、こんなことをしていていいのだろうか、迷っている人々だ。 ジョバンニも受験が不安だった。 機関長が迎える。 私のあだ名はグラスウィング・バタフライです。 体力はないですが勇気だけは自信があります。 ジョバンニは、昔、父が図鑑で見せてくれた南米特産の小さな蝶を思い出した。 春風に飛ばされて、高いビルを越えていった小さな蝶のことも思い出した。 駅長が話す。さあ、これから暗黒星雲コールサックの第2の難所「逃避の門」に入ります。 感覚や感情の脳は、猛獣のような具体的な危険に反応します。 逃げようとします。 言葉の脳は、不安のような抽象的な危険に反応します。 克服しようとします。 ライオンだと分かっているライオンと、正体が分からない怪物とどちらがより怖いですか。 名前が分かっているライオンには作戦が立てられます。 ライオンが獲物に変わるのです。 苦難に遭遇して、言葉にしないままおろおろしているより、言葉にすれば、ライオンだって獲物に変わるのです。 言葉にすると興奮が消え、怖くなくなります。 どんな困難も言葉にすれば乗り越える方法を思いつき、挑戦する勇気が湧いてくるのです。 ここのエンジンの燃料は勇気を表す言葉です。 みなさんこの逃避の門を抜けるため、勇気を表す言葉を作って、この香炉のエンジンにくべましょう。 いつもの通り、本当の勇気を手に入れるための、心の準備体操から始めます。黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 パソコンの画面に戻る。薫香録に記入する。 これから、皆さんがお持ちの感覚や感情の脳が作り出す逃避の本能を、言葉の脳が作り出す勇気を表す言葉にします。 逃避の本能は生木なので、湿っていて、そのままでは良い薪にならないのです。 そこの円卓に着席して下さい。 天の原探香記。城万二の成長物語(29)勇気の機関室。(2) 香始めます。礼。 各席に薫香録と鉛筆があります。下の名だけをひらがなで書きます 組香です。 香題は「勇気の言葉を作る」です。 逃避と勇気の2種の香を廻します。 勇気の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 SNSから離れて、実際に、通販で買った2種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香はバニラの匂いがした。 第2香はひのきの匂いがした。 父が残した勇気と書かれた香合は空なので、困っていると、よだかの流れ星だ。「これからの人生で、自分で手に入れなさい。今日のところは第2香と書きなさい」というテロップが流れた。 第2香と解答した。 組香に失敗した人々が、機関車の窓から、暗黒星雲コールサックに吸い込まれて消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の暗黒星雲コールサックの逃避の門に戻ったのです。に戻ったのです。途中で身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 「感動鬼神・恐れない心になる」です。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 願いを言葉にして目的に作れば、言葉の脳に、挑戦する勇気が湧いてきます。勇気は目的から湧きだす言葉の力なのです。 ドアに向かうのです。新約聖書にも「叩けよさらば開かれん」とあります。 まずはドアに向かうのです。 その先は次の我慢の機関室で聞いて下さい。 言葉は覚えることで身に付きます。書くとよく覚えられます。薫香録を書くのは、覚えてこの世に持ち帰るのが目的です。みなさんが書いた薫香録はこの駅に残して、未来の乗客たちが閲覧できるようになります。 帰ってからも、このSNSに入って、このひのき色の形をしたボタンを押して、この駅に来れば、勇気の言葉を思い出すことができます。 駅長がジョバンニに過去の薫香録のバインダーを見せてくれた。 父が書いた薫香録だった。ジョバンニと同じ中学2年だ。 何かの書き写しだ。 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう 今車掌から連絡があって、無事に第2の難所を通過出来ました。 すぐに次の難所に入ります。次の機関室へ移動願います。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 天の原探香記。城万二の成長物語(31)我慢の機関室。(1) 第3の機関室へ。 不安に耐える力が欲しい人々だ。 ジョバンニも受験のことを思いながらついて行った。 機関長が迎える。 私のあだ名はガラパゴスゾウガメです。 要領は悪いですが我慢だけは自信があります。 ジョバンニは小学校の池で、冬でも冬眠せずに春を待っていた亀の姿を思い出して、なるほどと思った。 さあ、これから暗黒星雲コールサックの第3の難所「衝動の門」に入ります。 衝動というと、どんな気持ちのことだと思いますか。 衝動は感覚や感情の脳に備わった自動的な反応です。 危険を避けたり、攻撃したり、子孫を残したり、競争や差別、安楽を求める本能です。 脳には衝動を抑える働きも備わっています。 それが言葉の脳の働きです。 ここではそれを我慢と呼びます。 子供なら考えずに泣く時でも、大人は泣くのを我慢して対応を考えようとします。 大人は自分で自分を守らねばなりません。 その為に我慢の働きがあるのです。 言葉の脳の働きで、感覚や感情の脳の本能である衝動を押さえるのです。 ここのエンジンの燃料は我慢する気持ちを作る言葉です。 みなさんこの衝動の門を抜けるため、我慢する気持ちを作る言葉を、この香炉のエンジンにくべましょう。 いつもの通り、我慢する気持ちを作る言葉を手に入れるための、心の準備体操から始めます。 黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。 黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。 苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。 SNSに戻る。薫香録に記入する。 これから、皆さんがお持ちの感覚や感情の脳が作り出す衝動の本能を、言葉の脳が作り出す我慢する気持ちを作る言葉にします。衝動の心は生木なので、湿っていて、そのままでは良い薪にならないのです。 そこの円卓に着席して下さい。 天の原探香記。城万二の成長物語(32)我慢の機関室。(2) 香始めます。礼。 各席に薫香録と鉛筆があります。下の名だけをひらがなで書きます。 組香です。 香題は「我慢する気持ちを作る」です。 衝動と我慢の2種の香を廻します。 我慢の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 SNSから離れて、実際に、通販で買った2種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香はバナナの匂いがした。 第2香は「いてふの実」の匂いがした。 父が残した我慢と書かれた香合は空なので、困っていると、よだかの流れ星だ。 「これからの人生で、自分で手に入れなさい。今日のところは第2香と書きなさい」というテロップが流れた。 第2香と解答した。 組香に失敗した人々が、機関車の窓から、暗黒星雲コールサックに吸い込まれて消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の暗黒星雲コールサックの衝動の門に戻ったのです。途中で身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。 ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 「久蔵不朽・我慢する気持ちを作る」。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 願いを言葉にして目的に作れば、言葉の脳に、我慢する気持ちが湧いてきます。我慢する気持ちは目的から湧きだす言葉の力なのです。 ドアを叩くのです。新約聖書にも「叩けよさらば開かれん」とあります。 まずはドアを叩くのです。その先は次の努力の機関室で聞いて下さい。 言葉は覚えることで身に付きます。書くとよく覚えられます。薫香録を書くのは、覚えてこの世に持ち帰るのが目的です。みなさんが書いた薫香録はこの駅に残して、未来の乗客たちが閲覧できるようになります。帰ってからも、このSNSに入って、この「いてふの実」の形をしたボタンを押して、この駅に来れば、我慢の言葉を思い出すことができます。 今車掌から連絡があって、無事に第3の難所を通過出来ました。 すぐに次の難所に入ります。次の機関室へ移動願います。 天の原探香記。城万二の成長物語(33)努力の機関室。(1) 最後の機関室へ移動する。 やり続ける力が欲しい人々だ。ジョバンニもついて行った。 機関長が迎える。 私のあだ名はゴーシュです。不器用ですが、諦めの悪いことだけは自信があります。 ジョバンニはあの物語の主人公を思いだした。 さあ、これから暗黒星雲コールサックの最後の難所「怠惰の門」に入ります。 怠惰というとみなさんは、どんな気持ちのことだと思いますか。 しなければいけない、した方がいいと思いながら、しないままにする。 努力とは、しなければいけないこと、した方がいいことを、好き嫌いに関わらず、し続けることです。 子供の頃、夏休みの宿題が、3日坊主だった方も多いと思います。 言葉の脳の働きが未熟で、感覚や感情の脳の怠惰の誘惑に流されたからです。 努力には言葉の脳の働きが必要です。 言葉の脳の働きはどうしたら強くなるのでしょう。 それは目的を持つことです。 目的があってすると、それはすべて言葉の脳の喜びです。 目的がはっきりしないまま何をしても、言葉の脳は喜びません。 目的は人生に意味を与え、努力する力を与えてくれます。 ここのエンジンの燃料は努力する気持ちを作る言葉です。 みなさんこの怠惰の門を抜けるため、努力する気持ちを作る言葉をこの香炉のエンジンにくべましょう。 いつもの通り、心の準備体操から始めます。黒方を3回廻します。1回目は感覚の脳で観賞します。2回目は感情の脳で観賞します。3回目は言葉の脳で観賞して言葉にします。結果を薫香録に書いて下さい。 SNSでは実際の香りは出ないので、パソコンを離れ、実際に、予め通販で購入しておいた線香を焚く。黒方の香りが流れる。本当の自分つまりあの世の心に切り替わる。苦痛や苦悩、不安や寂しさなどの感情の脳の興奮が消える。パソコンの画面に戻る。薫香録に記入する。 これから、皆さんがお持ちの感覚や感情の脳が作り出す怠惰の気持ちを、努力する気持ちを作る言葉にします。怠惰の気持ちは生木なので、湿っていて、そのままでは良い薪にならないのです。 そこの円卓に着席して下さい。 天の原探香記。城万二の成長物語(34)努力の機関室。(2) 香始めます。礼。 各席に薫香録と鉛筆があります。下の名だけをひらがなで書きます 組香です。香題は「努力する気持ちを生みだす言葉を作る」です。 諦めと努力の2種の香を廻します。 努力の香はどれでしょう。 これは古今東西の香道家たちが出した結論の香りです。それをどう聞くかは皆さん一人一人の仕事です。答を薫香録に記入して下さい。 SNSから離れて、実際に、通販で買った2種の香を洋式香炉(incense burner.)で聞く。 第1香はミルクの匂いがした。 第2香は「黒ぶだう」の匂いがした。 父が残した努力と書かれた香合は空なので、困っていると、よだかの流れ星。 「これからの人生で、自分で手に入れなさい。今日のところは第2香と書きなさい」というテロップが流れた。 第2香と解答した。 組香に失敗した人々が、機関車の窓から、暗黒星雲コールサックに吸い込まれて消えていく。 双六で言うと振り出しに戻ったのです。ここはあの世ですから、あの世の暗黒星雲コールサックの怠惰の門に戻ったのです。途中で身に着いた言霊はそのままですので、次回の挑戦はそこから始まります。つまり急行列車で直接そこまで行けます。ジョバンニは、ヒトよりたくさん苦難に出会ったせいか、何とかクリアしていきます。実はジョバンニには強い味方がいて、分からないように応援していたのでした。 献香。 本日の香を、香の十徳に、献香しましょう。 「能覚睡眠・努力する気持ちの目を覚ます」です。 香満ちました。ごきげんよう。礼。 天の原探香記。城万二の成長物語(35)努力の機関室(3) 願いを言葉にして目的に作れば、言葉の脳に、努力する気持ちが湧いてきます。 努力する気持ちは目的から湧きだす言葉の力なのです。 新約聖書にも「叩けよさらば開かれん」とあります。 ドアを叩き続けるのです。 このドアは開けるためのドアではなく、叩くためのドアなのです。 開く、開かないは、関係が無いのです。 幸福はドアの向こうにあるのではなく、叩くこと自体にあるのです。 ここまででお分かりのように、しっかりした目的を持つと、勇気も我慢も努力もセットで湧いてきて、嫌なこと苦しいことでも喜んで取り組めるようになれます。 結果とは無関係に、このプロセスこそ、本当の喜びなのです。 結果は運任せでいいのです。 今車掌からの連絡があって、無事に最後の難所を通過出来ました。 言葉は覚えることで身に付きます。書くとよく覚えられます。薫香録を書くのは、覚えてこの世に持ち帰るのが目的です。みなさんが書いた薫香録はこの駅に残して、未来の乗客たちが閲覧できるようになります。 帰ってからも、このSNSに入って、この「黒ぶだう」の形をしたボタンを押して、この駅に来れば、努力の言葉を思い出すことができます。 客車に戻ってゆっくりお休みください。 薫香録と引き換えに、朱印帖にスタンプを押してもらう。 客室に戻る。黒方の香りが流れてくる。 学んだことが、きちんと心に写される。 天の原探香記。城万二の成長物語(36)暗黒星雲コールサックの出口駅(1) 暗黒星雲は天の川を横断するトンネルになっている。 列車はまだトンネルの暗闇を走っている。 ジョバンニは相変わらず悩んでいた。どうして今のままではいけないのだろう。 やっとトンネルの出口が見えてきた。出口の向こうは夕焼けのようだ。 列車はその手前で止まった。 トンネルの壁に、「暗黒星雲コールサックの出口駅」という看板が貼られている。 青い壁灯が看板を浮かび上がらせているだけ、駅らしい物は何もない。 ここは名前だけの駅だった。 暗黒星雲での活動で疲れた乗客は誰も降りずにいた。 ほとんどの人が眠っている。 アナウンスは無く、前の座席の背の画面に案内が流れる。 ここはあの世ともこの世ともつかない場所です。 これまでのあの世からこれから行くこの世が生まれる場所です。 と言っても、自動的にあの世が明けてこの世になるのでなく、暗黒星雲コールサックで身に付けた目的、勇気、我慢、努力の言葉からこの世が生まれるのです。 未来は、過去や現在のような時間の言葉ではなく、一人一人の願望の言葉なのです。 言葉の脳が作る、苦難に立ち向かう目的の言葉なのです。 現在、過去、未来の関係は次の通りです。 現在の現実から記憶の過去が生まれます。 現在の苦難から願望の未来が生まれます。 願望の未来から生きる喜びが生まれます。 感覚や感情の心にとっては、苦難の無い現在の現実は快適ですが、言葉の心にとっては退屈という苦痛なのです。 ジョバンニが眠らず、ぼんやり外を眺めていると、よだかの流星。 画面の下に、臨時ニュースのようにテロップが流れる。 老人ホームで見守り中の入所者が入れたツイートなのですが、ジョバンニはその仕掛けを知りません。 「タイムマシンをうまく使える人になって下さい」。 みんな、言葉の脳というタイムマシンを持って生まれてきたのです。 現在の現実だけでなく、記憶の過去や願望の未来と行き来出来る力を持って生まれてきたのです。 勉強はそのための訓練なのです。 過去や未来は、一人一人が別々に言葉で作る、あの世のことです。 記憶や願望のことです。 本当のタイムマシンとは、あの世とこの世を行き来する心の切り替えの力のことですよ。 天の原探香記。城万二の成長物語(37)暗黒星雲コールサックの出口駅(2) ジョバンニは目を閉じた。眠っている間「ブルカニロ博士のビデオ第6章。あの世は、この世で強く生きる力を生みだす場所」が流れる。内容は次の通りだった。 中学へ入って、初めて英語を習って、時間には、現在、過去、未来があるのだと知った人も多いでしょう。 しかしそれは誤解もくれました。 現在が自動的に過去になるように、現在が自動的に未来になる、つまり現在のまま待っていれば未来が来ると思わせてしまいます。 現在は感覚や感情の脳が映し出す現実で、この世のことです。未来は言葉の脳が作りだす言葉で、あの世に属します。 つまり現在と未来は、互いに異次元にあるのです。 つながっていないのです。 この世の現実をあの世の未来に変えるためには、超能力が必要なのです。つまり、言葉の脳が作る、目的、勇気、我慢、努力の言葉の働きが必要なのです。 目的の言葉は、未来の実現に必要な、勇気、我慢、努力の気持ちを生みだします。結果がどうであれ、このプロセスは言葉の脳を幸福にします。このプロセスこそ未来の正体なのです。そして未来こそ幸福の正体なのです。 ヒトは普段は感覚や感情の脳で、この世を生きています。 しかし困難に出会うと、言葉の脳に切り替わって、言葉で願望の未来を作ります。 目的のことです。 合格したいという目的を言葉で作ると、やればできるという勇気が言葉で生まれ、遊びたい本能を我慢しようという言葉が生まれ、努力つまり勉強をします。 言葉を作らないと、感覚や感情の脳に戻って、なんとなく目的から逃げたり、怠けたりしてしまいます。 ヒトには早い足も、飛ぶ羽も、鋭い牙や爪もありません。 身を守ったり獲物を狩ったりするために身につけたのが、言葉の脳です。 言葉の脳はあの世を作ることができます。 言葉で出来た記憶の過去や願望の未来のことです。 敵や獲物の行動を言葉にして記憶して過去を作り、敵や獲物の未来の行動を言葉で作り、わなを仕掛けたり、待ち伏せしたりすることができます。 マンモスも、まさか人間が未来から現れて攻撃してくるとは思わなかったでしょう。 稲や麦の実が、1年経つと何十倍にも増えることを言葉にして覚えていて、今の空腹を我慢して、未来の何十倍もの麦を想像して、失敗を恐れず土に播いて、世話の努力をするのです。 ヒトには未来が見えるのです。 天の原探香記。城万二の成長物語(38)暗黒星雲コールサックの出口駅(3) 続いて「ブルカニロ博士のビデオ第7章。あの世の超能力を身につける」も流れる。 あの世の超能力を身につけるにはどうすればいいのでしょう。 言葉で考えればいいのです。 心を感覚や感情の心から言葉の心に切り替えればいいのです。 例えば1+1はなんだろうと考えるのです。 この世の雑念の入口である目を閉じ、耳をふさぐと、考えに集中しやすくなりますが、必ずしも必要ではありません。 瞑想とは、眼を閉じて無念無想になるといわれますが、生きている限り、感じず、考えずという状態にはなれません。 感じるか考えるかを切り替えるだけです。 感覚に集中している間は考えることが出来ません。 考えている間は感じにくくなります。 感じないようにするとか、考えないようにするようにするというのは、働く脳を切り替えるという意味で、どちらかの時間を長くする、という程度の話です。 禅で、公案という理屈を越えた言葉の難問を課して、それを解こうとする修行が在ります。 強制的に言葉の脳に切り替える練習です。 そうすれば、日常での困難や苦難に対しても、動揺しやすい感情の脳の働きを切り替えて、言葉の脳で冷静に対応できるようになります。 囲碁や将棋も、難問を解くゲームです。 勝敗にこだわると感情の脳が興奮してうまくいきません。 言葉の脳で冷静に考える方が結果として勝つのです。 柔道にも剣道にも、香道や茶道にも同じことが言えます。 ここから先は次の物語になります。 列車は高度を下げている。 雲のじゅうたんを突き抜けて、画面の左半分は暗い海。右半分が黒い陸地で、その中心に光のかたまりが見えてきた。 近づくにつれて一粒ずつに分かれて黒いビロードの布に撒かれた水晶の粒のようだ。 アナウンスが聞こえる。 長らくのご乗車お疲れ様でした。もうすぐ終着駅です。 天の原探香記。城万二の成長物語(39)未来探しの駅(1) アナウンス。 この鉄道には、終着駅はありません。 ここは未来探しの駅なのです。 みなさんの旅の究極の目的である幸福は、ここにあるのでなく、ここまでの旅にあったのです。 この旅で手に入れた言霊や、次にログインするための個人コードを、画面の「記憶する」というボタンを押して保存してください。 このSNSの中には現実の時間も季節もありませんが、これから戻る現実の世界は、冬の夕方です。 防寒をしっかりして、お降りください。又のご乗車をお待ちしています。 風が吹きすさぶ南三陸町役場の屋上にホームがあって、黒いインパネスに身を包んだ人影が、裾をおさえながらじっと出迎えていた。 この天の原老人ホームの創立者の銅像だった。 あの本の扉の写真とそっくりだ。 降車してしばらくすると背後にアナウンスが響く。 当列車は折り返し運転です。ご乗車の方はお急ぎください。 天の原鉄道の夜行列車は客を乗せて次の旅に向かう。 言霊の循環だ。 乗客の中に、前の旅で暗黒星雲に吸い込まれた人もいた。 発車の電子音。 音も無くドアが閉まる。 青い尾灯が雲に消えていく。 響いていた音も消える。 天の原探香記。城万二の成長物語(40)未来探しの駅(2) 残り香。 みんな、駆けこむようにエレベータに乗り、下へ降りて、改札を抜けて、天の原老人ホームの玄関ホールにある、ディサービスの広間に入る。 囲炉裏を囲む。 囲炉裏が香炉になっていた。 ホームの入所者たちも囲む。 半分は車いすだ。 ジョバンニの祖母もいる。 みんなこのSNSで、ジョバンニを見守っていたのだ。 他の乗客にもそれぞれに見守る人が居て、このSNSの中で、人の輪がどこまでも広がっている。 ホームの施設長もいる。 さあ、ジョバンニ君の未来に献香しましょう。 車椅子の人も、介護士に支えられた人も、囲炉裏の香炉を囲んで、うれしそうに献香をした。 こんなにもみんなを幸せにする祈りとは、どういうことなのだろう。 施設長の考えはこうだった。 祈りとは未来を言葉で作ることだ。 あの暗黒星雲コールサックでしたように目的を作ることだ。 色々な事情で、それに続く勇気、我慢、努力が無理な人には、代行してくれる人が必要なのだ。 それが神仏や贔屓の力士なのだ。 ここではそれがジョバンニだ。 次の春、看護師が、今日の事を思い出して投稿した。 あの夜、ホームの老人たちは幸福でした。 心のがれきが春の雪のように溶けたようでした。 どういう訳かこのホームでも、2月と8月にたくさんの人が旅立ちます。 寒さ暑さのせいかと思っていましたが、施設は空調完備です。 潮の満ち引きに関連付ける説もありますが、2月と8月の潮の干満が特にどうのということもありません。 今年の2月もいつもと同じでした。 ジョバンニをかわいがっていた数名の人が旅立ちました。 違うのは、少し幸せそうだったことです。 天の原探香記。城万二の成長物語(41)未来探しの駅(3) 移り香。 今日は冬至。一年で一番夜が長い日です。ここの香炉にゆずの香が点ててあります。 心をゆっくり温めてから、現実の世界へお戻り下さい。 ジョバンニはゆずの香りを聞いていると、出発前よりも自分が強くなった感じがした。 外に出ると、宵の明星がジョバンニの目的を、海鳴りがジョバンニの勇気を、三日月がジョバンニの我慢を、町の灯がジョバンニの努力を、保証してくれているように思えた。 町はもうすぐクリスマス。商店街の惣菜の匂いを通り抜けると、寮の明かりが見えてきた。 寮に戻る。 現実の世界ではパソコンを消したということだ。 奇跡の一本松のクローンの若木が窓から見える。 ジョバンニの父はこの老人ホームに勤めていた。 祖母は倒れてここに入り、幼かったジョバンニも寮に入れてもらった。 部屋に入り、机の上の家族写真を見ると、父が笑いかけている。 ポケットのものを出した。 色々詰め込んだはずだったが、出てきたのは、色ガラスのような樹脂の玉だけだった。 体験したことのない良い香りがする。 これが香木なのかと思い、仏壇の引き出しにしまった。 それからしばらく、部屋に入ると良い香りがしたが、いつしか感じなくなった。 命日に引き出しを開けると、消えていた。 移り香になってジョバンニの心に移ったのだ。 家族を探し、一緒に暮らしたいと思っていたけれど、見えないだけで、いつも一緒に居ることが分かった。 目的があると、勇気が湧き、我慢や努力が出来るということも分かったけれど、目的が自分の為だけの受験ということでいいのか疑問があった。 それは次回の旅の課題になる。 天の原探香記。城万二の成長物語(42)未来探しの駅(4) 見返りの香。 父の背中が見えるようになった。 話も聞けるようになった。 こんなふうに。 おまえの体はいつもこの世に居る。 おまえの自分は、言葉の心の働きで、あの世に居る。 体がこの世で苦難に出会うとSOSが出されて、おまえの自分は言霊の武器を持ってこの世に加勢に行く。 この鉄道の旅は、あの世を見失いがちなおまえの自分に、あの世にいることを理解させるためだ。 この旅で学んでほしいことは、生きようとする心の火を熾(おこ)すことだ。 目的を言葉で作り、挑戦する勇気を湧かし、必要な我慢と努力を実行することだ。 我慢や努力をすると幸福な気持ちになる。 目的は、幸福な気持ちを得る手段だ。 目的を実現することより、目的を実現しようとする過程が幸福なのだ。 それなら運に左右されることもない。 しかしヒトはなぜこうまでして未来を目指さなければならないのだろう。 感覚や感情の脳は、現在の現実の快適や安楽があれば満足する。 言葉の脳は、現在の現実の困難と戦うように作られている。 それが目的、つまり未来の正体だ。 でも目的は自分で作らねばならない。 外から何を言われても、理解できないまま鵜呑みにしてはいけない。 母さんは、妹たちと、はくちょう座の向こうへ旅の途中だ。 私もこれから追いかける。 現実の香炉はもう渡してある。 ホームの庭の奇跡の松の若木、みんなの未来。お前のことだ。 香満ちました。 このSNSは代々の理事長と、職員、ジョバンニの父もその一人でした、たちが作っています。 管理者は施設長です。 私は、高齢で、ディサービスの送迎バスの運転手をしています。 いつか、天の原鉄道の運転手になる日をめざして、記録係を仰せつかりました。 物語はここで終わります。 このSNSは無数の機関車の銀河で、これもその一つです。 何しろ今運航しているだけで70億の機関車がありますし、これまで生きていた何百万年間の人々の機関車もあるのです。 続きは、バージョンアップした次のSNSに引き継がれます。 明朝も大雪だそうで、ディサービスの送迎バスを早めに出さなくてはなりません。 これにて失礼します。 ごきげんよう。 |